建築計画
2017.11.27

第2章 -わたしと家の約80年のものがたり-

2010年 わたしたちのシェアハウス

 都内の大学に進学した「わたし」は、そろそろ自立した方が良いから、などとテキトーな理由をつけて、大学にも近い新宿でひとり暮らしを始めた。両親から仕送りを少しもらっているため、バイト代と合わせてなんとか生活はできていると思うが、6畳1Kでの暮らしは決して快適だとは言えない。同じような境遇の女友達がたまたま集まったタイミングで、親友のA子が「家賃をワリカンして一軒家でシェアハウスできないかな?」と言った。「そんなのOKしてくれる大家さんいないでしょ~」と返したときにふと、いまは空き家になっている三鷹の祖母の家を思い出した。

 最近は「シェア」がメディアなどでもてはやされており、正直ファッション化しているように思える。確かにコストメリットは感じるが、私自身はいわゆるシェアハウスに住む自信はない。仲のいいメンバーといつでも会えるというのは楽しそうな気もするが、反面自分自身のプライベートな領域はしっかり確保したい。突然知らない人がリビングに居る、なんてことがあるのかと想像しただけで気が滅入ってくる。

 わずかな可能性を、父の大学時代の同級生だという建築家に託すことにした。いつだったか、父を訪ねてうちに遊びに来た事があり、そのときふざけて「お仕事の依頼お待ちしています!!どんな小さな仕事でも、全力でやります!!」みたいなことを言いながら、まだ幼い「わたし」に名刺を渡してきた人だ。その約束をいま守ってもらおう。

 いかにもお金がないビンボー女子大生の「わたし」の顔を見て、大学の教員でもあるその建築家は彼の研究室の学生を使ったセルフビルドでの改修計画を提案してくれた。「産学協働」ということで、何やらよくわからない機械も設置するという。どうやら光熱費が安くなるらしいので、それはラッキーだと思ってすべて任せることにした。また、建築家は家の現状の仕様を意味不明な機器を用いて事細かに調査し「この建物は、少しずつ作り変えて使っていけばまだまだ寿命が延びると思いますよ。」と言った。そんな事ができるか正直よくわからないが、ひとまず祖母の家が残って良かったと思う。